左官工事

左官仕上げ

コテでできる仕上げ

左官の際は、壁や工程に合ったコテを使って施工したい

コテ(鏝)には多くの種類がある。工程や用途、壁の形状によって、材質や厚み、大きさ、形状の違った数十種類のコテを使い分ける。

さまざまなコテ

下塗り中塗り用のコテ

黒打ちゴテ・・・下塗り、中塗りの各種施工に使用される。金ゴテは一番むらがよく取れるため、土壁やモルタル塗付けに適する。寸法は30~300㎜
木ゴテ・・・コンクリートの均し、モルタル塗りのむら直しに使用される。チーク製とヒノキ製があり、施工性は後者が優れているが、材質が柔らかく消耗が激しいため前者が一般に使用されている。寸法は20~30㎜

黒打ちゴテ 下塗り用

黒打ちゴテ 中塗り用

木ゴテ

仕上げ用コテ

大津通し・・・漆喰、ドロマイトプラスター、石膏プラスター、大津壁などの仕上げ用として使用される。コテの幅が狭く、肉厚が薄いので、取り扱いに注意する。特に刃通りの引き目には気を付ける。寸法は30~300㎜
元首(もとくび)大津通し・・・主に石膏プラスターの仕上げに用いられる大津通しの一種。石膏プラスターは酸化鉄を材中に含むため、材質は錆びにくいステンレス
角ゴテ・・・壁、床のモルタル・プラスター塗りや、繊維壁の仕上げ用として使用される。用途は広く、野丁場が左官仕事の主流になってきた現在では、最も多く現場で使用されている。寸法は10~300冊
引きゴテ・・・漆喰や大津壁磨き仕上げで、柱際や塗り尻部分を柱に沿って押し込み、磨き上げるために使用される。寸法は60~201
こづらしゃっきりゴテ・・・引きゴテの一種。主に土蔵の漆喰仕上げに使用。観音開き戸などの磨きに活躍する
波消し・・・その名の通り、コテ波を消すのに使用される。主に砂壁、糊捏ね上塗りの仕上げに用いられる。材質が薄く、弾力性のある鋼製のものが多い。寸法は500~20㎜

大津通し

元首大津通し

角ゴテ

引きゴテ

こづらしゃっきりゴテ

波消し

細工用のコテ

つげへら

元首外丸面引きゴテ

元首切り付けゴテ

四半ゴテ

お福柳刃ゴテ

留めさらい

レールゴテ

鶴首面戸ゴテ

刷毛引き・櫛引き・掻き落とし

仕上がりの表情に変化をもたせるために重要な工法。天候や気温で進行が異なるので注意

刷毛引き

刷毛引きは、基礎の化粧塗りやモルタル塗りの土間をブラシで模様をつける工法だ。表面を荒らして滑り止めとしたり、施工中にできたヘアクラックを隠したりする。漆喰や土壁に施す場合もあり、砂漆喰や中塗り土などにブラシで横筋をつけ、仕上げていく。
一般的なコテ押さえより鮮明な表情をもつ意匠になり、シャープさが増す。また、ブラシの目や使用する刷毛によって、表情にはかなりの変化が出る。

引き

櫛引きは、あらかじめ押さえた壁か、もしくは掻き落とした壁に施される。定規をあてて、ワイヤーブラシ(櫛)や横目用コテなどを使い横筋を入れていく。
なお、刷毛引きと櫛引きでは、出隅部分には横目は入れないようにする。欠けや割れの原因となるからだ。なお、大きな壁で水平に横目を入れるには、熟練の技術と集中力が必要になる。

掻き落とし

掻き落としは、仕上げ材(モルタルや火山灰系外壁材など)を1~2㎜程度に厚塗りし、水引きのタイミングを計って表面を金ブラシなどで落としていく工法だ。骨材などの大きさにより、取除く量が決まってくる。

そのほかの工法

そのほかにも、渦巻き用の掻き落としブラシで下げる渦巻き工法や、タガネで表面を削る工法、スチロゴテで押える工法などがある。さまざまな工具を使用することで、仕上げのテクスチュアを変化させることができる。

共通の注意点

天候や気温によって左官材の乾燥時間が異なるが、乾燥のタイミングが仕上がりに大きく影響するので、左官工事の工程に十分な余裕をみておくなどの配慮が必要だ。

刷毛引き

砂漆喰や中塗り土などに、ブラシで横筋をつけて仕上げていく。モルタルなどにはホウキで仕上げることもある

使用道具

刷毛引きに使われる刷毛

刷毛引きにはホウキも使われる

仕上がり

漆喰刷毛引きのテクスチュア

火山系左官壁刷毛引きのテクスチュア

櫛引き

ワイヤーブラシや横目用コテなどを使い、定規をあてて横筋を入れていく。熟練を要する作業である

使用道具

櫛引き用の櫛

仕上がり

珪藻土櫛引きテクスチュア

櫛引き仕上げの土塀

掻き落とし

使用道具

掻き落としの道具

仕上がり

モルタルリシン掻き落としのテクスチュア

火山系左官壁掻き落としのテクスチュア

洗い出し・たたき

洗い出しは壁面や床に、たたきは玄関土間や軒下の床に施される工法だ

洗い出し

洗い出しは、小石などの種石とモルタルなどを混ぜて塗付け、生乾きのときに表面のモルタル部分を洗い流す工法だ。土間の幅木や基礎の部分、アプローチや玄関土間などの土足部分に施される。
まず、仕上げ面から50mほど掘り下げ、砕石を700㎜ほど敷き込み、転圧をかけてから全体にメッシュを敷き込む。次に、仕上げ面から30㎜ほど低い高さまで生コンなどを流し込み、砂利や玉石とセメントノロなどを混ぜて、仕上げ面の高さまで塗り付ける。少し時間を置いてから、半乾きの状態のところで流水で流す。木造住宅の土間では、水で表面を洗い流すと建具や框などの木部に損傷のおそれがある。そのため、水を使用しないでブラシやスポンジで表面を洗い流すとよい。

 

たたき

たたきは、土(主に種土[花崗岩風
化土])に石灰(主に消石灰)と少量の水海水の場合もあり)、にがり(海水から塩を抽出するときに残る固形分)を混ぜて練り、それを床に塗り、続けて叩きながら仕上げていく工法だ。玄関土間や軒下に施され、セメントがない時代に多用されていた。たたきには、保水性、蓄熱性、調湿性があり、室内環境を良好に保つことに貢献するが、表面は柔らかいため人が頻繁に通る部分は磨り減ってしまう。施工では土と消石灰を9対1の割合で混ぜるのがポイントだ。ただし、土が水を多く含んでいる場合などは砂を入れて粘性を抑える。

版築

版築は、型枠を組み、その中に土を入れ突き固めて壁をつくる工法。土の厚さ10㎝ごとに小石土などを木枠内に入れ、表土を突き固め、また木枠を付足し、その上に土を流し込んで突き固め、土を何層にも積み重ねていく。

洗い出し

小石などの種石とモルタルなどを混ぜて塗り付け、生乾きのときに表面のモルタル部分を水またはブラシなどで洗い流す

洗い出し写真のテクスチュア

玄関を洗い出しとした例

作業手順フローチャート

1 仕上げ面から150㎜掘り下げて砕石を70mmほど敷き込む
2 転圧をかける
3 全体にメッシュを敷き込む
4 仕上げ面から30mほど低い高さまで生コンなどを流し込む
5 砂利や玉石とセメントノロなどを混ぜて仕上げ面の高さまで塗り付ける
6 少し時間を置いて半乾きの状態のところで流水で流す。スポンジなどで表面を拭き取ってもよい

たたき

土に石灰と水を混ぜたものを塗り、表面を突き固めて床を仕上げる

桂離宮のたたきの例

たたきは最も古い土間の仕上げ

作業手順フローチャート

1 敷きならしの基準高さとして、壁や幅木などに墨を出す
2 少なくとも腰壁程度の高さまでビニルなどで養生を行っておく
3 調合時は土中の水分量に注意し、多いようであれば骨材などの混入を検討する
4 調合土を凹凸にならないように注意して叩く
5 表面の精度を上げるにはコテなどでムラなく伏せ込む
6 磨き仕上げの場合は、乾燥前に繊維などで擦る。刷毛引き仕上げの場合は、乾燥前に水はけなどで表面を軽く引く
7 気を与えた「むしろ」などで養生す養生しない場合も多いが、表面に温ると、仕上げ強度が上がる